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2008/12/03 09:08|

仁科芳雄(物理学者) 

仁科博士(1890-1951)は「日本の現代物理学の父」とも呼ばれる、偉大な学者です。

博士は、すぐれた理論物理学者というだけでなく、研究室や研究プロジェクトの運営、弟子や学生の教育、さらに理化学研究所の経営にもすぐれた手腕を発揮されました。
弟子に、朝永振一郎湯川秀樹など。

***

以下、湯川秀樹著作集7−回想・和歌より

・・・
しかし、私(湯川)が更に一層尊敬するのは、自己の利害を超越して、さらに毀誉褒貶を無視して、他人のため、公共のためにつくされたことであります。






今になって思い返しますと、仁科先生というのはおそらく、私の父親のかわりになった方ではないかという感じがいたします。

私の父は学者でしたけれども、いわゆるカミナリおやじでありました。
私はだいたい人からごちゃごちゃ言われるのはきらいですから、なるべくおやじの前にはでない。
前に出ればどなられる。

私はこれはまずいなと思いまして、敬遠主義をとってきました。

ところが仁科先生はああいう方でありますから、大変包容力がありまして、私がいろいろいうのを聞いて、「それは面白そうですね」といってくださる。

そういう人は、私にはなかった。

あとにもさきにも、他にもないんじゃないかと思うんです。



仁科先生は、ずいぶん多方面の活動をされました。

たとえば、
仁科研究室で理論物理の指導をされる。
原子核の実験ですね。
とくに大サイクロトロンをつくるという大仕事。
それから宇宙線。
ウイルソン霧箱を使うとか、中間子を見つけ出すというような仕事。
放射線物理では、中性子をウサギにあてるというようなこと。
それら全部の元締めになっておられた。

そのころ、研究室に百人ぐらい人がいたと思います。
いっさいのことをやっておられて、給料日が来れば研究室におる研究者全部ひとりひとりに月給を手渡しておられたんだということを、あとから聞きました。

雑用的なこと、それから自分の研究、これらいっさいを自分でやっておられたんです。


研究や雑用を全部抱え込んで、忙しくしておられたんでありますけれども、私が行きますと、忙しそうな顔をしておられたことがない。
いま忙しいからどうのということを、決しておっしゃることはない。

長い時間おしゃべりをしていると、その間に一度は「それは面白そうだね」と、かならずおっしゃるんです。

(引用文献:湯川秀樹著作集7−回想・和歌、1989年、岩波書店)

仁科博士の経歴は、仁科記念財団の仁科芳雄博士についてに詳しく載っています。


(感想など)

pepdesiさんのリクエスト、仁科博士を取り上げてみました。

仁科博士ご本人に関する伝記が手に入らなかったので、湯川博士のエッセイから引用させてもらいもらいました。

中でも、

「話を聞き、『面白そうだね』と承認してくれた
父親代わりの存在だった」

との湯川博士の回想から、
仁科博士は偏屈な学者集団を大きく包み込む、偉大なお父さんのような存在だったのではないかな、と思いました。

次から次へと活発に持論をぶつけてきたり、生意気なことを言ってきたりした弟子たちの話をじっと聞き、「面白そうですね」と一言声をかけてくれる仁科博士の姿が浮かぶようです。

どんなに偉い学者でも、見守ってくれる先生がいるというだけで、より一層がんばれるんですね(^^)。
もしかすると、朝永博士もエッセイを書きながら「自分も生意気だったなあ」と、仁科博士のことを思い出していたかもしれません。
生意気さについての朝永博士のエッセイ紹介)



実は私は、仁科博士に関しては日本独自の原爆開発のリーダーだったことから、敬遠しているところがありました。

今回、弟子の湯川博士から見た仁科博士像がわかり、当時の日本の研究者たちの置かれた立場や精神構造をもっと深く掘り下げて考察したい、と思えるようになりました。

ちなみに「神のいない聖都」によると、アメリカで原爆開発をしていた研究者たちは、まさか実際には使わないだろう(テスト実験で原爆の威力を誇示し、威嚇するために作っていた)と、楽観視していたそうです。
軍部の考えは、そうじゃなかったんだなあ。
(京都・奈良が空襲を免れた本当の理由)
悲しい(;_;)。


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ともあれ、科学者たちのお父さん・仁科博士、見守ってくれてありがとうございました!

2007/06/16 11:36|すごい科学者たちTB:0CM:0

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